冒頭のに述べた岩波書店の日本書紀の単行本の解説によれば「神功皇后は実在の人物であったとみる人 も少なくない。
しかし、ある学者はその事績があまりにも神秘的であることなどからみて、実在性がきわめて疑わしく 、むしろ観念の所産みるほうが妥当と思われると言い、またある学者は、七世紀の女帝、斉明女帝などをモデルとして構
成されたものとみる人もいる。
四世紀中葉以降、五世紀初頭までのあいだ、積極的な朝鮮経営がおこなわれたことは、 百済記や広開土王碑文に見られる歴史上の事実であり、なんらかの意味で、史実と関係あることは考えられる。しかし 、物語はその記憶がほとんど忘れさられてしまった後、六世紀に旧辞のつくられるころ、その時期の朝鮮経営をふまえその起源 を語るものとして、この話が叙作されたのだとみる説もある。」
穴門や筑紫における神功皇后の史跡の一つ一つを吟味して、この仲哀天皇の行跡や神功皇后の史跡を顧みると、神がかり的な日本書紀の叙述の中に、歴史の真実が読み取れることがわかります。神功皇后は新羅や百済の征討を自ら企図したのではありません。新羅や熊襲に恨みを持つ人々、主に住吉の神を奉斎する人々に代表される人々が、神功皇后を征討の旗頭に祭りあげられたものと思われます。
新羅寇に恨みをいだいた人々がいたのです。長門の住吉忌宮の境内の拝殿下の境内広場には、鬼石が祀られています。
豊浦宮に新羅の塵輪(じんりん)が熊襲を煽動して攻め寄せ、皇軍は奮戦したが仲哀天皇は自ら弓矢をとって塵輪を射倒し、賊は退散した。
皇軍は歓喜のあまり矛をかざし、旗をふって塵輪の屍のまわりを踊りまわったのが天下の奇祭「数方庭（す-ほてい）」起こりと伝えられています。
歴史家が神功皇后の物語が後世に叙作されたというのは、やはり史実を無視した学者の見解といえるだろう。
神功皇后紀は、日本の各地に残る神功皇后伝説や史跡を検証して、その物語を作出することは至難の技のように思われます。むしろ仲哀紀や神功皇后紀を忠実に解釈し、各地に残る伝承を検証してこの古代史を語る第一級の文献を評価するべきではないかと思われる。
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戦勝報告と禊
第一部 神功皇后紀のあとがき