河内の国錦部郡の古地図

河内の国錦部郡小山田邑　古地図

　小山田の由来とその起源を求めて私の探索はようやく、小山田町の古代史を知る入り口に到達した。 人は誰でも自分自身の育った環境やその古代史に関心を持っているだろう。しかし、いくら考えても、その結論を得ることはできない。村の古老に聞くのもいいだろう。しかし古老とて、そんな知識は言い伝え程度の域を超えないだろう。過ぎ去った遠い過去の痕跡を求めて、うろうろと歩いてみても、人生の短い時を浪費するだけである。
　 私の選んだ方法は古い文献を自分の頭で解釈し、吟味することであった。また、古い神社の言い伝えやその祭神を知ることであった。 幸い日本では一番古い古文書として認められている、古事記(西暦710年成立)および日本書紀(西暦720年成立)があり、また、小山田には住吉神社という古い神社があり、これらを手がかりに自分の頭で考えることから始めることにした。

　古事記や日本書紀を何回も何回も読み、特に古事記の記述と、日本書紀の記述を読み返して、その文言を重視してみた。これ以降に成立した古文書の記述も参考にした。必ず、資料に基づき、自分の頭で考えた。　学者といわれる著名な考古学者の意見にまどわされてはいけない。彼らは根拠もなく、自分勝手な歴史を捏造して、無益な論争を繰り広げている。

　日本書紀は当代一流の官僚が朝廷の公式見解として取りまとめしたもので、古事記は宮中で密かに作成され、稗田阿礼（ひえだのあれ）がそらんじたものを、太安万侶（おおのやすまろ）が筆記したものというように、個人的に編集した物語で、皇祖神　天照大御神を礼賛した古文書である。
　実際に古事記の内容は読みやすく物語り的であり、分りやすいけれども、文献としての価値は日本書紀に劣っている。

　日本書紀を編集した藤原不比等（ふじわらのふひと）らは当代一流の官僚で、当時の最高のインテリです。もちろん、当時の中国の古い文献も読んでいたことでしょう。いろいろの文献を一書という形式で異なる伝承をも紹介しています。
　 郷土の歴史を研究する上で、非常に大切なものは、郷土で一番古い文献を探すことです。
　河内長野市小山田町には、南河内の他の神社の祭礼に比べても特異な馬駆け神事が古くから行われています。この特異なお祭りを知るために、小山田住吉神社の由緒書を手がかりに日本書紀の仲哀記や神功紀を読み進めていくことにいたしました。

　 すると、神功皇后の三韓征伐のことや、小山田邑（おやまだむら）の記述があり、また長門の山田邑の記述もあって、なにか因縁がありそうな文書を見つけた。そこには、3世紀から4世紀にかけて仲哀天皇の不慮の死と神がかり的な神功皇后の活躍や大和と朝鮮半島との国際情勢がいきいきと描写されています。 　資料を手がかりに私たち小山田邑のルーツを探すロマンを追って見ましょう。

神功皇后行路推定図

住吉神社参道

住吉神社　由緒書

河内長野市　説明板

　当神社は小山田の東南尾上山の丘陵に鎮座し神功皇后三韓征伐の際関係が深く三神に祈願して、凱旋の後、天下を巡行された時、和泉の国の逆瀬川（さかせがわ）の上流の騰舵船（ほんだむ）と言うところに到着されそれより河内の国に行幸された時、弓矢を射(う)たれ、この矢の落ちたところを着御の地とお定めになりその時その国境に名主与三五郎という者が迎えに出て先導し、当神社の南方高天原に招かれた。 　神功皇后摂政52年には、この地に斎宮（いわいのみや）を建立され、3月壬朔（みずのえのついたち）に皇后吉日を選んで斎宮に入り自ら神主となってご祭祀され多くの歴史をもつ尊い宮です。

高天原神社

仲哀天皇御陵の碑

この由緒書から次のようなことが分ります。
�@　祭神は住吉三神・・・表筒男命　　　中筒男命　　底筒男命 　
　　息長足姫命（おきながたらしひめのみこと）　　武内宿禰　　　

�A　天野の地はもともと高天原（たかまがはら）と呼ばれていたらしい。高天原とは、古事記の記述では、皇祖神の神産霊神(かみむすびのかみ)高皇産霊神">(たかみむすびのかみ)等、天つ神の天上の世界です。　かなり神聖な場所だったのでしょう。 原始宗教の特徴は自然を畏怖し自然を崇拝することが多い。大木や磐座(いわざ)、山などに、なにか神霊が宿っており人々の暮らしを守ってくれる神の存在を感じて畏怖しお祭りをするようになったのでしょう。天野の地（あまののち）にそういった磐座か神聖な、なにかあったのでしょうか。 いずれにせよ、神聖な土地として天野の地一帯は重要な祭祀の行われた場所であったのでしょう。

�B 神功皇后摂政52年にこの地に斎宮（いわいのみや）が建立された。神功皇后自らこの吉日を選んで斎宮（いわいのみや） に入りみずから神主となってご祭祀された。ということは、神功皇后がこの宮を建立し自ら祭祀されるという巫女（みこ）のような人物です。摂政52年とはかなり後年すぎるように思われますが。 わざわざ、何のためにここに斎宮を建立したのか、また、何を祈ったのでしょうか。 しかし、これだけの解説でなかなか、小山田住吉神社の由緒を理解することはできないでしょう。

　神功皇后はなぜこの地に行幸され自ら弓を引き、着御の地をさだめる必要があったのでしょうか。 なぜこ摂政になって52年後に斎宮を建立され自ら祭主となりなにを祈ったのかまったく不明としか言いようがありません。 また当神社に伝わる馬賭け神事の起源についてもまったく触れられていません。また、神功皇后の三韓征伐と当住吉神社の関係も不明です。 　疑問を疑問として、自らその真実に迫るしか、だれも教えてはくれません。