日本書紀より年表を抜粋する
神代(かみよ)　　　　　イザナギの神が筑紫の日向(ひむか)の小戸(おど)の橘(たちばな)のアワキガハラで禊(みそぎ)する、穢れ(けがれ)を祓(はら)ったとき、海の中より表筒男(うわつつのお)・中筒男(なかつつのお)・底筒男(そこつつのお)の住吉の三柱(みはしら)の神が生まれる。

仲哀天皇二年　気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと)　仲哀天皇の皇后になる

仲哀天皇元年　春正月　仲哀天皇即位する
仲哀天皇二年　春正月　気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと)を立てて皇后とする

仲哀天皇二年　春三月　熊襲(くまそ)叛(そむ)きて朝貢せず　浮船(うきぶね)よりして穴門(あなと)にいでます。

仲哀天皇ニ年　夏六月　天皇、豊浦の津に泊まる

仲哀天皇ニ年　秋七月　皇后　豊浦の津に泊まる

仲哀天皇ニ年　秋九月　宮室を穴門(あなと)に建てる是を穴門豊浦の宮(あなととようらのみや)という

仲哀天皇八年　春六月　筑紫に出でます。岡の県主の祖(おや)熊鰐(わに)海路を導く。
　　筑紫の伊都の県主の祖　五十跡手（いとで）穴門の引島に迎える

仲哀天皇八年　秋九月　香椎の宮にて熊襲を討つことをはかる。神様がいて皇后に託(かか)り曰く「天皇、なぜ熊襲の服(まつろ)はないのを憂え給う。是、宍（しし）の背骨のような何も無い国だぞ、どうして、軍(いくさ)をあげて討つに必要はない、この国に勝り宝ある国・・・新羅という。もし良く吾を祭ると、その国は必ずおのずから服従するだろう。また、熊襲も服従するだろう。・・・それには、天皇の御船および穴門(あなと)の直(あたい)践立（ほむたち）の献つる水田(こなた)を神に手向けなさい」と告げられる。天皇は疑われて従い給わず。時に神　また皇后に託(かか)り、「天津水影(あまつみずかげ)のごとく、押し伏せて我が見る国を、どうして国無しとのたまいて、わが言をそしりたまう。それ、汝王(いましみこと)　かくのたまいて、遂に受けないのならば、汝(いまし)その国を得ることはないだろう。ただし、今、皇后初めてご妊娠している、其の子が獲得することになるでしょう」と教えられる。 　

仲哀天皇九年　春二月　天皇たちまち病み給うことあって、明日(くるつひ)に崩御される。　すなわち神 の言を用いたまわずして早く崩御なさったことが知られた。
　　筑紫の香椎の宮で崩御さる。時に皇后は天皇が神の教えに従わず早く崩御され たまいしことをかなしんで、祟(たた)るところの神を知りて財宝の国を求めんと思われる。 罪を祓(はら)え過(あやまち)ちを改(あらた)めて更に、斎宮を小山田邑に造らしむ。

仲哀天皇九年　春三月　　気長足姫尊は斎宮(いわいのみや)に入りて親(みずか)ら神主となりたまう。 武内宿禰に琴を弾かせ、中臣鳥賊津使主(なかとみのいかつのおみ)を召して審庭者（さにわ）にして、先の日に天皇に教え給いし神の名を知らんと祈る。七日七夜に なって、神はその名を天照大神の荒魂（あらみたま）、事代主の神、尾田の淡郡（あわのこおり）に居る神が居ると答え 給う、さらに審庭者（さにわ）（神の真意を聞き伝える人）が「いま答えなくともいいが更らに後 に言うことがありますか」と申しあげると、神は「日向の国の橘小門（たちばなのおど）の水底に居て水葉 も稚(わか)やかに出で居る神、名は表筒男・中筒男・底筒男の神有す」住吉の神であると教え られる。審庭者がさらに神がいるかを問うたところ「有ることとも無きこととも知らず」 と答えられた。時に神の言葉を得て、教えのままに祭る。

仲哀天皇九年　夏四月　　皇后自ら(みずから)、西の国を征討(せいとう)せんと思われる。ここに、神田を定めてつくる。神田に水を引かせて溝（うなで）をほる。

仲哀天皇九年　秋九月　　諸国に命令して兵を集める。軍人集まり難し。大三輪社（おおみわのやしろ）を建て刀、矛（ほこ）を奉る。軍人（いくさびと）おのずから集まる。

仲哀天皇九年　冬十月　　ワニの津より新羅に発つ。

仲哀天皇九年　冬十二月　三韓征伐より凱旋（がいせん）して、皇子を筑紫にて産む。 軍(いくさ)に従いし神、表筒男・中筒男・底筒男の三柱の神、皇后に教えて曰く、「我が荒魂(あらみたま)(注2)をば、穴門(あなと)の山田邑に祭(いわ)はしめよ」とのたまう。よって祠(ほこら)を穴門（あなと）の山田邑に立てる。

仲哀天皇十年　春二月　気長足姫尊（おきながたらしひめのみこと）は穴門(下関)豊浦の宮に移る。仲哀天皇の棺(ひつぎ)を納めて海路より京に向かう。時に、かご坂の皇子、忍熊の皇子の妃の大中津姫（おおなかつひめ）の子　人毎(ひとごと)に兵(つわもの)を取らしめて住江で皇后を待つ。皇后は武内宿禰に命じて誉田の皇子を南海より出て紀伊の港に入らしむ。皇后の船は直接難波を目指す。しかし、皇后の船は海中をめぐり進めず。武庫の港に至り神に占う。住吉三神は「我が和魂（にぎみたま）(注3)をば、大津淳中倉(おおつのぬなくら)の長狭(ながを)に居さしむべし。便(すなわち)因りて往来(ゆきか)う船を看さしむ」とし、また、アマテラス大神など諸神を祭り平らかに海をわたる。皇后は紀伊の国に至り、日嗣(ひつぎ)の皇子に日高で会う。

仲哀天皇十年　春三月　　小竹宮(しののみや)に移り忍熊(おしくま)の皇子を宇治に滅ぼす。

仲哀天皇十年　冬十月　皇后を尊び皇太后とし、すなわち摂政元年とする。

摂政二年　冬十一月　仲哀天皇を河内国の長野の陵に葬る

摂政三年　春正月　誉田(ほんだむ)の皇子(みこ)を太子(ひつぎのみこ)とする。

摂政十一年　四月　卯の日　摂津住吉に住吉神社創建(注5)　　大阪府神社名鑑より

摂政五十二年　四月中の卯の日　小山田に豊浦神社創建(注6)　　小山田住吉神社由緒書より　

　 「仲哀天皇九年春二月に足仲彦天皇筑紫の香椎宮に崩御された。時に皇后は天皇が神の教えに従わずして早く崩御し賜いしことを傷みたまいて、考えられた、祟るところの神を知り、財宝の国を求めんと思われた。これをもって群臣及び百寮に命令して罪を祓え過ちを改めて、さらに斎宮を小山田邑に造営された。」の記述があります。
小山田邑の斎宮については、2か所あります。江戸時代の学者貝原益軒は香椎宮にほど近い、久山町の上山田邑斎宮こそ皇后が造営された斎宮であるとされています。

山田邑斎宮の由来記　香椎の斎宮(いつきのみや) 　
　小山田邑の所在地について香椎宮(かしいのみや)にほど近い久山町の山田邑斎宮の由来記を読んで見ましょう。
　「当宮は、神功皇后が新羅(しらぎ)討伐のとき、自ら神主となり神の教を祈願された霊蹤(れいじゅう)の地でつぎのような由来を伝えている。第十四代仲哀天皇は、仲哀八年己卯の春、神功皇后とご一緒に熊襲(くまそ)征伐(せいばつ)のため、筑紫の香椎宮(かしいのみや)に行幸(ぎょうこう)された。　そのとき皇后に「熊襲(くまそ)の服さないのは新羅の後援なれば、本幹(ほんかん)たる新羅を攻めれば支葉の熊襲は自ずから枯れん」という神のおつげがあった。しかし、仲哀天皇は神のおつげを無視して熊襲を討たれたため、失敗されて香椎宮に帰られ翌年二月病気で崩御された。　皇后は非常にお歎きになったが、密かに御屍(みかばね)を納めになり喪(も)をかくして賊徒征伐の業をお継ぎになったのです。 そうして、香椎宮から群臣（まえつきみたち）百僚(つかさつかさ)を率いて小山田邑（上山田）に行啓され、御住居になったところが聖母屋敷で、聖母屋の西南にあたる六所の地に斎宮(いわいのみや)を造営され、皇后自ら神主となり六所神を祀り、三月朔日から七日七夜、戦勝祈願をなされた。神々の御加護により国内も治まり、三韓も戦わずして平定された。」とあります。　したがってこの小山田邑は香椎の近くにある久山町の上山田邑であるとされています。

　　
しかしこの小山田邑の斎宮についてもう1か所　斎宮跡として古賀市小山田邑にもあります。いずれが本当か判断はできませんが香椎宮に近い上山田邑の斎宮が正しいと思われます。
　

　　 久 山 町　上山田邑斎宮　　　　　 　　 　　　古賀市小山田村斎宮